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浦和高校ソフトテニス部麗和会
私は、30歳から、イギリス駐在を機に、ゴルフを始め、夢中になりました。ティーショットは、必ず途中から大きく右に曲がるスライスというより、バナナボールでした。どうにか真っ直ぐ飛ばそうと、何年も練習に励み、本を読んだり、コーチを受けたりしましたが、どうしても直らず、ドライバーを、それまでのパーシモンモンヘッドドライバーから、メタルヘッドの「Big Bertha」に変えてみました。1991年のことです。その途端、今まで見たことのないストレートボールが打てました。その時の弾道は、今でも鮮やかに覚えています。「ゴルフは道具だ!」と思った瞬間です。「Big Bertha」は、ヘッド重量を増大させることなく、それまで見たことのない大きなヘッドサイズ(191立方cm)にすることで、スィートエリアの拡大を実現しました。多少のミスはクラブが補い、曲がりやエネルギーロスを抑えてくれる「易しいクラブ」として、ゴルフ史に名を残す爆発的な大ヒット商品となりました。これにより、キャロウェイ社は、ゴルフメーカーとして、飛躍的に発展しました。

 それから約18年、現在私の使用ドライバーは、ナイキの「Sasquatch」です。「タイガーウッズ使用」というキャッチコピーで衝動買いしたもので、何本目のドライバーか見当もつきません。そのヘッドサイズは、Big Berthaの約2.4倍の460立方cmです。目をつぶって振ってもボールに当たる安心感があります。スプーン(3番ウッド)もBig Berthaドライバーよりヘッド体積が大きくなっています。最新科学の粋を集めたゴルフクラブは、加速度的に進化を遂げてきたのです。
中古ゴルフショップで、昔、高くて買えなかった「本間」のパーシモンヘッド.フェアウェイウッドに、「150円」の値札が貼られているのを見た時、時代の流れを感じずには得ませんでした。

 今年、25年以上ぶりにラケットを買おうとラケットショップに行って、驚きました。「カワサキ」も「フタバヤ」もないではないですか。とっくの昔につぶれて、今は、ヨネックスとミズノ、ダンロップの3大メーカーが取って替わっていました。まさしく浦島太郎状態で、半日かけて、パンフレットを隅から隅まで読みながら、様々なラケットを見て回って、ダブルシャフトのラケットを2本(ヨネックス.ネクステージ90S、同ナノフォース5S)買いました。「カワサキ」の大人気ラケット「ニューナンバー1」(¥7,500)、工芸品のような美しさを誇った「マスターストローク」(¥11,000)、「フタバヤ」の剛球ウェポン「パワー」(¥8,000)、みんな木製、ウッドラケットでした。国体2位の故近藤さんは、特注品の重い「パワー」のグリップ部分を扁平八角形に削って、カットサービスをやり易いようにしていました。ガットはもちろん鯨筋でした。

 バドミントンラケットメーカーであった「ヨネックス」が、新素材カーボンを使用した「カーボネックス」により、ソフトテニス界に乱入、業界のシェアを1人占めしてしまいました。ラケット素材の変革に出遅れた前記2社を、土俵の外にまで追い込んだ「ヨネックス」の勢いは、ゴルフのキャロウェイ社の「Big Bertha」流行時のそれと同じ様な感じだったことでしょう。
「ナイキ」は、2002年にゴルフ用品に参入、タイガーウッズなどの使用で、アッという間にトップブランドにのし上がってきました。「ヨネックス」も大広告塔になった石川遼ちゃんの牽引により、ゴルフ用品市場で、急成長しています。
硬式テニスでは、「バボラ」というメーカーが、ナダル、ロディックなどの使用で、猛烈な勢いでシェアを伸ばしています。「スリクソン」も、今年満を持して、テニスラケットの発売に踏み切りました。
 熾烈な競争が次々と新しい技術を生み、ユーザーの選択肢を増やし、メーカーは、向上心を購買意欲にシフトしようと、ありとあらゆる手立てで、消費マインドを刺激してきます。

 ラケットの変革で一番目に挙げられるのは、軽量化でしょう。ソフトテニスラケットでは現在ウッドラケットと比べ、平均約20%軽くなっています。ジュニア、シニア両世代競技人口の広がりは、ラケットの軽量化に負うところが大きいと思われます。3大メーカーのラケット重量ヴァリエーションは201〜282gの範囲で6種類です。ソフトテニス参入中の、硬式テニスラケット人気メーカー「プリンス」は、180g100平方インチの超軽量デカラケで、勝負をかけてきています。
また、ラケットは、反発性、衝撃吸収性、面安定性、空気抵抗など、すべての面において大幅な進化を遂げています。多くの機能を「搭載」して、「マシーン」と化したラケットと共に、見逃せないのが、直接ボールと接触するストリング(ガット)の進化です。
昔の鯨筋やナイロンと大違いなのが、その種類の多さです。「技チタン」「飛びチタン」「サイバーナチュラルコントロール」「スーパーバイオ」「ミクロパワー」−−−−。扁平形状のモデルもでてきました。

 どのラケットで、また重量で6種類、グリップサイズで5種類、どれでいくか、また、どのガットを張るか、など自分の「ベストパートナー」を選ぶのは、大変ですが、楽しい作業です。ストリングテンションがまたまた迷うところで、どの位の張り具合が自分のベストか、分かりません。ヘッドスピード、年齢、性別、季節によっても、テンションは変わってきます。10月末の休日に、浦高に来た、昨年の県高校ランク1位の前衛.半澤君(武蔵越生高卒)に「テンションはどの位で張ってるの?」と聞いたら、「縦が40で横が38ポンドです。」という答えが返ってきました。へー、やっぱり相当研究してるんだ、と思いました。考えてみると、縦(メイン)の方が横(クロス)より長い分、少しきつく張る方がいいのかもしれません。「錦織圭」は縦横で違う種類のストリングを使っています。
 ラケットに表示されている推奨張力はソフトテニスで20〜35、硬式テニスで40〜60というものが多いようです。いろいろ試してみましたが、30と27でも全然タッチが違うラケットになってしまいます。

「ビョルン.ボルグ」は、全盛期、ウッドラケットに、限界ギリギリの80ポンド!の張りで、強烈なトップスピンを打っていましたが、脅威的なヘッドスピードだったのでしょう。
 ソフトテニスでも、大きな大会会場には「ストリングブース」が必ずあり、「ストリンガー」が選手の要望に応じて、「チューンアップ」をしてくれます。
20代の若い頃、試合に負ける度にラケットを買い替えていました。決して負けてたたき割っていたのではないのですが。「自分の手の延長」のようなフィーリンングで操作できる、ベストラケット、ベストテンションを早く見つけ出したいものです。

 先日、浦高39回卒の酒井君が、約2年ぶりにコートに来てくれました。彼は浦高卒業後も、大学、社会人と、ずーっと、多くの大会で活躍し、天皇杯も2回出場しています。練習の最後に、自動車から、大きなラケットバッグを持ってきました。ドサッと置いたバッグの中からは、「16本もの上級者用ラケット」が出てきました。集まってきた現役に、「これあげるよ」と一言。大歓声があがりました。中には、中堀(NTT西日本広島)が使用していたラケットまであります。11月の現役.OB対抗戦の際には、9回卒の西村さんから「40着以上!のテニスウェア」などを、寄贈して頂きました。それに続くプレゼントに、現役連中は、感謝しきりでした。酒井君はラケットを買う際、常に同じものを2本買うそうです。彼も「ベストパートナー」を探す、長い「旅」をしているんだ、と思いました。

 性能の飛躍的アップにより操作性などが向上した現在のラケット。昔のラケットと比べると、「ママチャリ」と「ツール.ド.フランス仕様のロードバイク」程の違いがあるのではないでしょうか。「テニスフォーム」も当然のように、変貌をとげています。象徴的なのがバックスィングのコンパクト化です。反発性能の上がったラケット、ガットにより、大きくラケットを引く必要がなくなったのです。ラケットの性能を引き出すプレーが出来るのが、一流プレーヤーの証、と言えるかもしれません。

 平安時代、嵯峨天皇、橘逸勢と共に「三筆」のひとりに数えられた能書家「弘法大師」は「弘法筆を選ばず」と言われました。弘法大師のような書の「達人」はともかく、道具を使うスポーツの世界では、「弘法筆を選ばず」という諺は、風化してしまったようです。


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弘法筆を選ばず? 2009年12月12日 0:16